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樋口一葉『たけくらべ』  「可愛い」美登利が「愛おしい!」第三章を…どうにか解説💦  〜 私なりの現代語訳(再推敲) 〜 

こんにちは!

 

樋口一葉 『たけくらべ』 の 第三章 の解説です。

ようやく、ヒロイン美登利が登場です!!

 

無邪気で明るい、でも繊細な面もあった

現・少年少女 元・少年少女 の皆様

 

に、捧げたい!!

そんな、第三章です。

 

 suiさんの「可愛い君が愛おしい!」という曲の様に、

美登利の魅力を説明できたらとm(_ _)m

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たけくらべ  第三章  (夏祭りの前 表町組)

 

 

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 解けば、足にも届きそうな髪は、根上りに固くひっつめて、前髪の大きな髷が重たげな、赭熊(しゃぐま)と言う結い方。名前は恐ろしげだが、この髪型が今の流行りで、良家のお嬢様もなさる事だといわれている。

 色白で鼻筋も通り、口元は小さくないけれどスッキリしていて形良く、一つ一つの作りは完璧ではないけれど、話す時の澄んで通った声や、人を見る目にとても愛嬌があって、生き生きした身のこなしが人を惹きつける。

 柿色に蝶鳥を染めた大柄の浴衣を着て、黒繻子と染め分け絞りの昼夜帯を胸高に締め、足には高い塗り木履を履き、朝湯の帰りに、白く美しい首筋に手ぬぐいをかけた立ち姿を、

 

「三年後の姿を見たい!」

 

と、遊郭帰りの若者が言ったものである。

 

 その少女は、大黒屋美登利という。紀州生まれで、まだ少し訛っている言葉もかえって可愛く、そもそも、こうした気前のいい気性を喜ばない人はいないだろう。

 彼女が持ち歩いている、子供には似合わない財布の重さには訳がある。

 実の姉が全盛の花魁なので、その恩恵があり、更には、やり手の新造、つまりは花魁の世話係の女性が、姉のご機嫌とりにも、妹である美登利に、

 

「美いちゃん人形をお買いなされ、これは手毬代にでも」

 

などと言って、ホイホイと小遣いをくれるのである。

 まだ世間知らず、無邪気な美登利は、恩を着せられる訳では無いので素直に受け取り、特にありがたいとも思わず、深く考えずに、散財するはするは……。

 

 同級生の女の子達に揃いのゴム毬を与えたり、表町組のたまり場である筆やの、棚に売れ残りになっていたオモチャを買い占めて、筆やと友達を喜ばせた事もある。

 

 こうした日々昼夜の散財が、本当なら、この歳この身分の娘に出来るはずはない。将来は一体何になる身なのだろうか?

 一緒に暮らしている両親も、そうした次女の振る舞いを大目に見て、厳しい言葉をかけるでも無く、大黒寮の主人が、この娘を大切がる様子も怪しい。

 

 よくよく話を聞けば、美登利は大黒屋主人の養女でも親戚では、もとより無い。

 美登利の実の姉が身売りした時に、鑑定に来た遊郭楼の主人に誘われるままに、この土地、吉原で暮らしたいと思い立ち、両親と美登利の三人、旅姿でやってきたと言う訳らしい。

 

 それ以上に立ち入ればどういう内状かというと、今は寮の番をしながら、母は遊女の仕立物、父は小格子の書記になっている。

 

 美登利は、遊芸手芸学校にも通わされているが、その他は気ままに、半日は姉の部屋、半日は町で遊び、見聞きするのは三味線に太鼓、朱色や紫の派手な色ものの着物という毎日である。

 

 紀州から越してきたばかりの頃は、地味な着物で歩いていると、田舎者、田舎者と、町内の娘達に笑われたものだった。それを悔しがって、三日三晩泣き続けた事もあったが、今では、美登利の方が人々を嘲り、野暮な姿をけなす様な事を言っても、言い返す者がいなくなった。

 

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 八月二十日は、お祭りだから、思いっきり面白い事をして欲しいと、友達にせがまれた美登利。

 

「趣向は何なりと、皆それぞれに工夫して、大勢で楽しめる事が良いでしょう。幾らでも良いよ、お金は私が出すから!」

といって、いつもの通り気前よく引き受ける美登利。

 そうした子供仲間内の女王様からの、ありがたいお恵みは、子供達には、大人よりも利き目が早く、みんなを喜ばせた。

 

茶番にしよう。どこかの店を借りて、往来からも見えるようにして……」

 

と、一人が言ったら、

 

「馬鹿を言え、それよりは、お神輿をこしらえておくれよ。蒲田屋の奥に飾ってある様な、本物のやつを。重くても構わないさ。やっちょいやっちょい、訳ないさ」

 

と、ねじり鉢巻をする男の子の側から、

 

「それでは私たちがつまらない。みんなが騒ぐのを見るばかりでは、美登利さんだって面白くないでしょ?あんた達は何でも、勝手に好きな様にしなさいよ!」

 

と、女子の一群は、祭りよりも、何なら常盤座のお芝居をと、言いたげな様子なのがおかしい。

 

 田中の正太は、可愛らしい眼をぐるぐると動かして、

 

幻燈にしないか?幻燈に。

 俺のところにも少しはあるし、足りないのを美登利さんに買って貰って、筆やの店でやらせてもらおうよ。俺が映し役で、横町の三五郎に口上を言わせよう。美登利さん、それにしないか?」

 

と言うと、

 

「ああ、それは面白いだろうね。三ちゃんの口上ならば誰も笑わずにはいられないよ。ついでに、あの面白い顔が映ると、なお面白いだろう」

 

 その様に相談が整って、正太が不足の品の買い物役になり、汗だくで飛び回るのも面白い。

 祭りがいよいよ明日となるころには、横町にまでも、その噂は聞こえたのであった。

 

 参考文献は、こちらです。

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

  • 発売日: 2004/12/11
  • メディア: 文庫
 

 

 

 今日の、心のBGMは、こちらのキュートな曲でした。

<a href="https://utaten.com/lyric/nk20082402">可愛い君が愛おしい! 歌詞</a> 

 

最近、少しずつですが、2010年以降の歌も、聴くようにしています。

素敵な歌、たくさんありますね!

 

雨が心配ですが、みなさま、ご自愛ください。

 

ありがとうございます。