こんばんは。
連休の二日目ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は今日一日、冬支度でバタバタしていました。
当ブログでの「たけくらべ」についても「晩秋」から「冬」へと進んできました。
十一月下旬ごろ、ちょうど今時分のシーンだと思います。
第十四章
この年は、酉の市が三日間で、神社は大にぎわい。吉原の人々も、ここが稼ぎ時と活気付いてる様子。
酉の市の最終日は、家業の休みをもらった正太郎。市の見物をしながら、美登利を探していました。
団子屋の汁粉屋をのぞくと、材料の飴が品切れになりそうで困り果てていました。
その場をしのぐ知恵を教えてやると、おまえは商人向きだと褒められ、複雑な心境の正太郎。
団子屋のトンマに美登利を見たかと尋ねると、
さっき俺の家の前を通った時、髪を島田に結って、とても綺麗だったという。
花魁になるのでは可哀想だという正太郎。
そうなったら、俺はお金を貯めて買いに行くという団子屋のトンマ。
それを呆れてたしなめる正太郎。
別れの挨拶をし、人ごみを歩き出した正太郎は、廓の向こうから番頭新造と一緒にやってくる美登利を見つけます。
大島田に結った髪に鼈甲をさし、花簪をひらめかせ、色鮮やかな装いで、京人形の様。
あっと驚き見ていると、気が付いた美登利が走り寄ります。連れの女性に別れを告げ、逃げる様に正太郎と歩き出す美登利。
正太郎が美登利の袖を引いて装いを褒め、いつ結ったのと甘えて尋ねても、美登利は元気がありません。
姉さんの部屋で今朝結って貰ったの。私は厭でしょうが無い。
と呟き、人々の視線を恥じるのでした。
第十五章
その日の美登利には人に言えない事情があり、人々の褒め言葉は、あざけりの言葉に聞こえるだけ。
島田の髷の美しさに振り返る人たちがあっても、それはただ自分を蔑む目つきに思えてしまう。たまらず、逃げるように自宅へ向かいます。
酉の市へは、一緒に行こうと言っていたのに、美登利が自宅へと急ぐので、怪訝に思う正太郎。
訳を聞いても、美登利は顔だけ真っ赤にして
何でもない
と言うだけです。
正太郎も後を追って寮に入っていくと、美登利の母親が彼に声をかけます。しかし正太が具合を尋ねても、母親は心配している様には見えません。
美登利は、いつの間にか小座敷に布団とかい巻きを持ち出して、布団にうつ伏しているばかり。
正太郎は遠慮がちに具合を訪ねますが、美登利は返事もせず、顔を押さえつけた袖に、忍び泣きの涙。
帰っておくれ、正太さん。お願いだから帰っておくれ!
お前がいると、私は死んでしまう。
話しかけられると頭痛がする、口を利くと目が回る。
誰も、誰も、私のところへ来ては嫌だから、お前もどうぞ、帰って!
と、愛想尽かしの言葉。正太には、何故なのか訳も分かりません。売り言葉に買い言葉、キツい言葉でやり返してしまいます。
それならば帰るよ。お邪魔さまでございました!
と言い捨て、正太は庭先から駆け出したのでした。
酉の市を境に、おそらく美登利は、自分の本当の運命を知り、嘘のように、それまでの快活さ、自信を失ったのだと思います。
何らかの事情で、今まで自信を持てていた事、信じられていた事柄が、一度に失われたのではないかと思います。
この場面では、改めて昔の人々の価値観について、吉原という場所の価値観について、考えさせられました。
お付き合い、ありがとうございます。