こんにちは。
『大つごもり』の、私なりの現代語訳、続きを書きます。
大晦日の午前中、またもや山村家の 義理の母 と 義理の惣領息子 の
いがみあい(?)が勃発しました。
そのとばっちりを受ける様な形で、お峯が大ピンチに。
日頃の厳しい扱いの上に、止めを刺すような奥様の無情なお言葉。
お峯が絶望と怒りで途方に暮れる中、正午を知らせる号砲が鳴り響いたのでした。
さて、どうなるのでしょうか。
樋口一葉『大つごもり』私なりの現代語訳 その6
すると突然、玄関が開いて、誰かが入ってきた。
「お母様はいらっしゃいますか!
直ぐにおいで下さいませ!
上のお嬢様が今朝から陣痛のお苦しみが始まりまして、おそらく午後にご出産になりそうです!
初産なので、旦那様もどうして良いか、お分かりにならず、お騒ぎなされて…
ご年配の方がおらぬ家ですので、その混乱ぶりは、お話になりません!
今すぐに、おいで下さいまし!」
と言って、生死の分かれ目ともなり得る初産に、西応寺の娘が、当然の事とばかりに迎えの車でやってきたのだった。
(これは、大晦日だからと言って、あちら様に遠慮もしてはいられぬ事だ!…かといって、家にはお金もあるし、どら息子がごろ寝しているし…
行きたい!…でも行きたくない理由も…
ああ、どうしよう!)
奥様の心は二つに分かれるのだけれど、体を二つには分けられない。
結局、実の娘への愛情に負けて、奥様は車に乗った。しかしながら、こんな大事な時だと言うのに、呑気者の夫が心底憎らしく、
(全く!大晦日の日なんかに沖釣りに行く事もないでしょうに!)
と、釣り好きで張り合いなのい御主人の事を、つくづく恨みがましく思いながら、奥様は出発したのだった。
※
そんな奥様のお出かけと行き違いに、三之助が「こちら」と聞いていた白銀台町のお屋敷を間違えずに尋ね当ててやって来た。しかし、
(こんなみすぼらしい身なりで、姉さんに恥をかかせない様にしなくちゃ…)
と、姉の立場を思いやり、勝手口から恐る恐る中を覗き込んだのだった。
(誰か来たのかしら?)
と、かまどの前で突っ伏して泣いていたお峯は、慌てて涙を隠し、出て行って見つけたのは、三之助その子であった。
(おお、よく来たね…とも言われない実情を、どうすれば良いかしら…)
「姉さま、ぼくが入っても叱られませんか?約束の物は貰って行かれますか?
旦那様や奥様に、良くお礼を申して来る様に父さんから言われました!」
と、実情を知らない三之助の無邪気な喜び顔が、お峯にはつらい。
「三ちゃん、ともかく待っていて下さいね。私はまだ少し用があるから…」
と、急いでその場を離れて、お峯は家の中と外を見回した。
(お嬢様方は庭で羽付きに夢中、雇われ小僧さんは、まだお使いから帰っていない…お針子さんは二階だし耳が遠い人だから大丈夫。若旦那様は…?)
と見ると、居間の炬燵で、今はちょうど夢の真っ只中らしい。
(どうか、神様、仏様、私は悪人になります!
なりたくはないけれど…ならねばならないのです!
罰をお与えになるなら、私一人にして下さい。
お金を使う伯父や伯母は、本当の事を知らないのですから、お許し下さいませ!
恐れ多い事ですけれども…
このお金…盗ませて下さい!)
と祈りつつ、以前から見知っていた硯の引き出しから、札束のうちの二枚だけ掴み出した後の事は…
お峯には夢とも現実とも分からず、お金を三之助に渡して家に帰した一部始終を、
(見た人はいるまい)
と思ったのだった。
今回はここまでにいたします。
参考文献はこちらです。
ついにお峯ちゃんが…!
朝からゴタゴタ続きの、山村家の大晦日は…
まだまだ色々ありそうです💦
と言うわけで、今回はこちらの歌が、私の頭をよぎりました。
山村家の…
暮れ は〜 ジェットコースター ♪
みたいだと感じた、土曜日の夕暮れでありました。
お付き合い、ありがとうございました。