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樋口一葉『たけくらべ』について 第一章・第八章〜十章の感想・解釈  明治吉原事情、信如、美登利の考えについて

こんにちは。

今回は、「たけくらべ」の、四季にはあまり関係のなかった章について書きます。

 

 

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第一章 

 吉原に暮らす大人たちの仕事・職業・立場について。

 住人達が、副業、内職として精を出している熊手作りについての説明。

 そうした土地柄の子供達には、どんな子供がいるか。子供達が通う育英舎という学校についての説明などがされています。

 

 

第八章

 明け方の吉原の情景。住民達の、遊郭に関する噂話。

 夕方に吉原を訪れて、明け方に帰っていく男性たちの様子。吉原の女性が人気者になる過程の例え話や、花魁人気の浮き沈み、世代交代などの説明。

 いずれにしても、人気、出世といえば、この界隈に住む者で対象になるのは「女性」の方だと書かれています。

 その一方、出世に縁のない地元の青年達は、不良的に格好をつけ、本業稼業はそこそこに、バクチや女遊びに熱中しているばかりの様子。

 

 そんな土地で暮らしているので、紀州から越してきた美登利も、吉原の常識、生活に染まっていった様です。

 今はまだ、遊女達の派手さ、美しさにばかり惹かれて、姉の本当の苦労、吉原の本当の姿も知らず、素直に憧れている美登利。そんな美登利の事を、一葉さんは

哀れである

と表現しています。

 

 吉原の遊郭内で稼いでいる人々には、芸人達もいる様です。彼らは昼間の遊郭で一稼ぎしている様ですが、郭外の町角では儲からないのを知っているので、いつもみんな素通り。

 ある日、いい声の女太夫が通り過ぎるのを筆やの女房が惜しがっていました。おきゃんな美登利は、そこで気前よく振る舞ったため、太夫を喜ばせ、居合わせた大人達を驚かせたのした。

 

 

  第九章 

 この章ではまず、龍華寺と、信如の両親の実像。両親が夫婦になった経緯。信如の姉の実像が書かれています。

 寺の人間でありながら欲深い両親、明るく世渡り上手らしい姉の日常と、長男であり弟である信如の個人的な苦しみ。 

 頑固なところはあっても、内心は意気地の無い自分を自覚し、恥じている心情などが描写されています。

 信如は、商売に積極的だったり、生臭いものを好物とする両親について、学校仲間から噂される事をひどく恐れています。学校仲間といっても、横町組の仲間ではなく、特に表町の美登利正太郎の事を意識している様です。

 

 

第十章

 祭り夜は、翌日まで留守にしていた信如。

 翌日に友人から聞き知り、長吉の乱暴に驚き、特に自分の名が使われた事を迷惑に思い、後悔します。

 失態を自ら悔いていた長吉も、後から信如に詫びます。そうした長吉を、信如は叱りはしませんでしたが、もう喧嘩が無いようにと思うのでした。

 

  祭りの夜に乱暴を受け、怪我をした三五郎。

 彼の家は貧しく、父親は、立場上も性格的にも目上の人たちに強い態度ができない人です。そんな父に事件の事を話しても、逆に叱られるだけだと思い、黙っていたのでした。

 

 しかし、日が経つと次第に忘れる性分。

 長吉の家の乳児の子守で小遣いがもらえれば、素直に嬉しい。生意気盛りの十六歳だが、あまり自尊心はなく、表町に行けば、いつも正太郎と美登利の、からかいの的になるのですが、遊び仲間から外れはしないのでした。

 

 

 

 一章と八章、十章 は、主に樋口一葉さんの視点から見た、当時の吉原の様子について、書かれていると思いました。

 説明文が多いので、理解するのが個人的に難しかった部分です。 

 

 八章の後半は、そんな吉原に住む様になった美登利が、吉原の実態や、自分が小遣い銭に不自由しない理由をまだ知らず、無邪気に憧れ、得意になっている様子が強調されていると感じました。

 

 九章は、長男の信如から見た、龍華寺の藤本家の「家族の肖像」です。

 信如の、両親や姉の価値観や暮らしぶりに対する、疑問や嫌悪感が書かれており、それが原因で自分が学友、特に美登利達から悪く思われる事を恐れている様です。

 家族の事だけでなく、自分自身の気の弱さ、行動力の無さなども恥じている信如。

 だからこそだと思うのですが、彼は、その短所を、学問と真面目さで補おうとしている様に感じました。

 

 十章(前半)は、

 祭りの翌日、乱闘を知った信如と長吉のやり取りが、少し微笑ましく思えました。

 一方、ひどい乱暴を受けた三五郎は、立場上、加害者の長吉に何も言えません。

 

 当時の吉原界隈にもあったと思われる格差社会について、書かれている様に感じました。

 

 

お付き合い、ありがとうございます。