芸術は心のごはん🍚

映画・小説・漫画・アニメ・音楽の感想、紹介文などを書いています。

樋口一葉『たけくらべ』について 「秋」第十章・第十一章の感想・解釈  「秋雨の夜」

 こんにちは。

皆様、いかがお過ごしでしょうか?

今日は、雨降りでした。

今回は、「たけくらべ」の第十章、十一章の「秋雨の夜」について書きます。

 

第十章(後半)

 

 秋風が涼しくなってきた、そんな折の、秋雨しとしと寂しい夜。

 戸を閉めていた筆やの中で、美登利と正太郎、その他に小さい子供が、おはじき遊びをしていた時。

 美登利が、外に誰かお客がきた気配がすると言い、それを聞いた正太郎は、仲間が来たのかと喜びます。しかし、その気配はふっと途絶えてしまいます。

 

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第十一章

 

 正太郎が戸を開けて「ばあ!」と言いながら顔を出すと、客らしかった人は、遠くをぽつぽつと歩いて行くところでした。

 それが信如だとわかった正太。美登利に、

声をかけても無駄だよ、あいつだから

と答えながら、自分の頭を丸めて見せます。信如の悪口を並べつつ、後ろ姿を名残惜しそうに見送る美登利。

 正太郎にどうしかしたのかと声を掛けられ、慌てる美登利。取り繕う様に、また信如の悪口を並べ立て、正太郎に同意を求めます。

 そんな二人のふざけたやり取りに、筆屋の中が盛り上がります。筆屋の女房にもからかわれた幼馴染の二人でした。

 

 

 秋雨の夜、筆やに入ろうとして、美登利と正太郎が仲良く遊んでいるのがわかった信如。

 筆も買わず、気配すらも消して、こっそり、とぼとぼと帰っていきます。それ程、辛かったのかも知れません。

 

 そんな事情を知らない美登利。

 後ろ姿をいつまでも見送る程、本当はとても気になるのに、それまでの屈辱もあり、声をかける事は出来ません。

 信如の悪口を並べ立てて、正太に同意を求めます。

 

 そんな中で、筆やの女房に、からかわれる正太と美登利。正太は動揺してムキになりますが、美登利は冷静でした。

 

 

 美登利の方は、自分が店内にいたから、信如は必要だった買い物もせずに帰ってしまったのかもしれない、それ程嫌われているのかもしれないと感じ、改めて、がっかりしたのかもしれないと思いました。

 

 

お付き合い、ありがとうございます。 

 

樋口一葉『たけくらべ』について 第一章・第八章〜十章の感想・解釈  明治吉原事情、信如、美登利の考えについて

こんにちは。

今回は、「たけくらべ」の、四季にはあまり関係のなかった章について書きます。

 

 

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第一章 

 吉原に暮らす大人たちの仕事・職業・立場について。

 住人達が、副業、内職として精を出している熊手作りについての説明。

 そうした土地柄の子供達には、どんな子供がいるか。子供達が通う育英舎という学校についての説明などがされています。

 

 

第八章

 明け方の吉原の情景。住民達の、遊郭に関する噂話。

 夕方に吉原を訪れて、明け方に帰っていく男性たちの様子。吉原の女性が人気者になる過程の例え話や、花魁人気の浮き沈み、世代交代などの説明。

 いずれにしても、人気、出世といえば、この界隈に住む者で対象になるのは「女性」の方だと書かれています。

 その一方、出世に縁のない地元の青年達は、不良的に格好をつけ、本業稼業はそこそこに、バクチや女遊びに熱中しているばかりの様子。

 

 そんな土地で暮らしているので、紀州から越してきた美登利も、吉原の常識、生活に染まっていった様です。

 今はまだ、遊女達の派手さ、美しさにばかり惹かれて、姉の本当の苦労、吉原の本当の姿も知らず、素直に憧れている美登利。そんな美登利の事を、一葉さんは

哀れである

と表現しています。

 

 吉原の遊郭内で稼いでいる人々には、芸人達もいる様です。彼らは昼間の遊郭で一稼ぎしている様ですが、郭外の町角では儲からないのを知っているので、いつもみんな素通り。

 ある日、いい声の女太夫が通り過ぎるのを筆やの女房が惜しがっていました。おきゃんな美登利は、そこで気前よく振る舞ったため、太夫を喜ばせ、居合わせた大人達を驚かせたのした。

 

 

  第九章 

 この章ではまず、龍華寺と、信如の両親の実像。両親が夫婦になった経緯。信如の姉の実像が書かれています。

 寺の人間でありながら欲深い両親、明るく世渡り上手らしい姉の日常と、長男であり弟である信如の個人的な苦しみ。 

 頑固なところはあっても、内心は意気地の無い自分を自覚し、恥じている心情などが描写されています。

 信如は、商売に積極的だったり、生臭いものを好物とする両親について、学校仲間から噂される事をひどく恐れています。学校仲間といっても、横町組の仲間ではなく、特に表町の美登利正太郎の事を意識している様です。

 

 

第十章

 祭り夜は、翌日まで留守にしていた信如。

 翌日に友人から聞き知り、長吉の乱暴に驚き、特に自分の名が使われた事を迷惑に思い、後悔します。

 失態を自ら悔いていた長吉も、後から信如に詫びます。そうした長吉を、信如は叱りはしませんでしたが、もう喧嘩が無いようにと思うのでした。

 

  祭りの夜に乱暴を受け、怪我をした三五郎。

 彼の家は貧しく、父親は、立場上も性格的にも目上の人たちに強い態度ができない人です。そんな父に事件の事を話しても、逆に叱られるだけだと思い、黙っていたのでした。

 

 しかし、日が経つと次第に忘れる性分。

 長吉の家の乳児の子守で小遣いがもらえれば、素直に嬉しい。生意気盛りの十六歳だが、あまり自尊心はなく、表町に行けば、いつも正太郎と美登利の、からかいの的になるのですが、遊び仲間から外れはしないのでした。

 

 

 

 一章と八章、十章 は、主に樋口一葉さんの視点から見た、当時の吉原の様子について、書かれていると思いました。

 説明文が多いので、理解するのが個人的に難しかった部分です。 

 

 八章の後半は、そんな吉原に住む様になった美登利が、吉原の実態や、自分が小遣い銭に不自由しない理由をまだ知らず、無邪気に憧れ、得意になっている様子が強調されていると感じました。

 

 九章は、長男の信如から見た、龍華寺の藤本家の「家族の肖像」です。

 信如の、両親や姉の価値観や暮らしぶりに対する、疑問や嫌悪感が書かれており、それが原因で自分が学友、特に美登利達から悪く思われる事を恐れている様です。

 家族の事だけでなく、自分自身の気の弱さ、行動力の無さなども恥じている信如。

 だからこそだと思うのですが、彼は、その短所を、学問と真面目さで補おうとしている様に感じました。

 

 十章(前半)は、

 祭りの翌日、乱闘を知った信如と長吉のやり取りが、少し微笑ましく思えました。

 一方、ひどい乱暴を受けた三五郎は、立場上、加害者の長吉に何も言えません。

 

 当時の吉原界隈にもあったと思われる格差社会について、書かれている様に感じました。

 

 

お付き合い、ありがとうございます。 

樋口一葉『たけくらべ』について 四季べつの感想・解釈  「春(若葉の頃)」☘ 第七章について

今日は夜に更新します。

11月も半分ほど過ぎましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか?

 

今回は、「たけくらべ」の「春から初夏」までの場面、七章の感想・解釈です。

 

美内すずえ先生の「ガラスの仮面」3巻の表紙が素晴らしいので、紹介させて頂きます。

私は漫画の劇中劇での亜弓さんの美登利、桜小路くんの信如も大好きなのですが、

この表紙では、マヤの美登利と桜小路くんの信如が描かれていて、とても嬉しいです。

 

ガラスの仮面 3 

 

「春から初夏」第七章

 

 この章では、場面がその年の春に戻ります。

 春から夏祭りまでに、信如美登利の間に、どの様な事があったかが書かれています。

 四月末に、学校の大運動会がありました。時間も忘れて夢中になっていた時、信如は池のほとりの松の根につまずき、地面に手をついて、羽織の袂も泥まみれになってしまいます。

 そこに居合わせた美登利が、見かねて自分の紅のハンケチを差し出しました。

  しかし、学友たちが二人を冷やかします。

 元来、そうした冷やかしを、するのも受けるのもとことん嫌いな信如。彼はそれ以来、内心は惹かれつつも、美登利を避ける様になります。

 

 学校からの帰り道、少し前を歩いていた美登利から

美しい花が咲いているのに、枝が高くて私には折れないから、代わりに折ってください

と頼まれた時は、流石に知らぬふりはできませんでした。

 信如は狼狽し、よく花を見ずに、手直な花枝を折って投げ捨てる様にして、スタスタとその場を去ってしまったのでした。

 

 流石の美登利も呆れ、傷つき、美登利の方からも信如に近づかなくなります。

 そうして二人の間には、目に見えない、大きな川が流れているような状況になったのでした。

 

  後半は、夏祭りに侮辱を受けた後の、美登利の長吉、信如に対する悔しさ、怒り、大黒寮で大事にされている自分への誇らしい気持ちが書かれています。

 その様な経緯があり、夏祭りの後、美登利は学校に行かなくなったのでした。 

 

 運動会でのハンカチの気遣いについてですが、 

 元々、心優しく世話好きの美登利にとって、それは自然な行動だったのではないかと思います。

 おそらく信如の方は、非常に驚き、本当は嬉しく、戸惑ったのではないかと思います。その一方、学友に揶揄われた恥ずかしさ、悔しさ、そうした信如の心の動きも印象的です。

 

 美登利から花の枝を頼まれた時、信如は本当は、一番綺麗な枝を選んで、渡したかったのかも知れません。 

 その他にも、無邪気な美登利の、学校での言葉かけに素直に答えられませんでした。

 美登利は、そんな信如の仕打ちに傷つき、自分からも距離を置く様になります。

 

 美登利の親切で天真爛漫な性格ゆえの言動、それに対して、内気で繊細、不器用な信如の行動。二人は、外から見ていると、本当に真逆、対照的な人柄に思えます。

 

それでも私は、二人には

曲がった事が大嫌い

という共通点があると思いました。

 

 

お付き合い、ありがとうございます。 

 

樋口一葉『たけくらべ』について 四季べつの感想・解釈  「夏」🌻 第二章〜第六章について

こんにちは!

今回は「たけくらべ」夏の場面の章につての感想・解釈を書きます。 

 

「夏」第二章〜第六章

 

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(二章)

二章の長吉と信如のやり取りは、とても興味深い文章です。

生まれ育ち、性質も真逆ながら、幼馴染の男子二人のやりとりでわかることは、

 

長吉

年下のくせに金持ち坊ちゃんぶり、大人達を味方につけて、横町組の自分たちを乱暴、頭の悪い私立だと言って貶す  

正太郎が気に食わない。 

 

信如

知識人ぶり、私立の生徒を見下し、おそらく幼馴染として、いつも美登利と仲良く遊んでいる  

正太郎が気に食わない。

 

理由は違えど 正太郎が気に食わない

と言うところで、意見が一致したため、信如は長吉に名前を貸すことにしたのではないかと、私は思います。

 

もともと乱暴な長吉とは違い、普段、乱暴が嫌いで大人しい信如が、

正太郎を取っちめたいんだ!

と持ちかけられて、だんだんテンションが上がってしまい、

最後には土産に貰った小刀をうっかり持ち出し、長吉に見せてしまいます。

 

よく利れそうだね 

と、長吉に言われておそらく、ハッと我に帰り

 

しまった危ない、これを振り回してなる事か。危ない危ないと、思ったのではないかと感じました。

 

正太郎だけでなく、信如の方も、正太郎が 恋敵 学問敵 だと言うことを、内心自覚していたのでは無いかと感じました。

 

 

(三章)

 この章で語られる美登利の生い立ちや、吉原にやってきて後の、今の暮らしぶり、彼女の無邪気な明るさ、彼女に対する周りの人々(大人達・子供達)の接し方、その理由を考えると、とても切なくなりました。

 これは推測ですが、美登利の漢字は、花魁になってからも使う源氏名なのでは?と感じました。

 長吉達の悪巧みの準備が進む一方で、表町組の正太美登利達は、祭りの遊びをどうするか、趣向を無邪気に相談しています。

お金がかかっても良いよ。私が出すから…などと気前よく言う美登利。

夏祭りの夜には筆やで幻燈をやろう!

と、相談をまとめ、その支度にかかります。

 

(四章)

    お金持ちで可愛らしい正太の、祭りの日の晴れ姿。

 対照的な、三五郎と、その家庭事情の描写。

 正太と三五郎は、何かにつけて対照的なイメージです。

 筆やで美登利が来るのを待っている時の人々のやりとり。

 正太郎は、知恵と愛嬌はあるのですが、まだ幼く小柄で、腕力が着くのは、これから……という少年です。

 おめかしで遅れている美登利を、彼は三五郎に迎えに行かせます。しかし夕飯を食べるようにと祖母が迎えにきたため、自宅に帰ってしまいます。人気者の正太が帰ると、途端にその場が寂しくなりました。

 その後、正太郎の祖母の風貌や人柄についての描写、彼女やその商売、遊郭事情などについての、女性達の井戸端会議の様子などが、シニカルに描かれていると思いました。

 四章は個人的に、理解するのが難しい章でした。

 

(五章)

 おめかしの支度がようやく整い、誇らしげに、迎えの三五郎と共に大黒寮を出た美登利。夕食のために家に戻った正太とすれ違いに、筆やにやってきます。

   正太の不在を残念がる美登利。彼女のご機嫌とりに慌てる仲間たち。しかし、その時の正太の不在を予測していなかったのは、美登利だけではありませんでした。 

 予定通りのつもりで、一群で筆やに暴れ込んできた、長吉率いる横町組の少年たち。

 

 しかし長吉は、大暴れはしたものの、正太をとっちめる事はできませんでした。

 三五郎は、諸々の事情で、二股やろうと罵られ、正太郎を引き出すための口実の様に引き出され、大勢にただ一人、暴力を振るわれました。

 美登利は、長吉の乱暴ぶり、祭りの夜に自分たちの遊び場を荒らされた事に腹が立ったのと、三五郎かばうため、少女の身で長吉に立ち向かい、あろうことか、額に草履をぶつけられたのでした。

 退散する前に、長吉が捨て台詞に

こっちには信如もついているぞ!

と言ったため、信如は間接的に、またしても美登利を傷つけ、怒らせる事になります。

 因みに、この章には二人の主要人物(正太信如)は登場しません。

 

 私は、乱闘前に夕飯という理由で、正太の祖母が迎えに来た事は、祖母が乱闘の予兆を知り、孫の正太を助けるためだったのではないかと感じています。

 正太郎の祖母は、自分自身も高齢で女性という、弱い立場です。お祖母さんは、たった一人の家族で、大事な跡取りの正太の心と体を守るために、それまでも同じ様なやり方をしてきたのではないかと思いました。

 

(六章)

  祭りの翌日、正太は、自分が不在だったせいで美登利たちが酷い目にあった事を知り、美登利に謝ります。

 夏の暑い日、正太の家での、幼馴染二人のやり取りも印象的です。

 二人の可愛らしさが際立つ場面なのですが、この場面の読みどころは、正太郎のかわゆさだと思います。作者の樋口一葉さんもかわゆさと、書いています。

 

 六章の正太郎の台詞を読んでいると、正太郎が信如を、横町組としてだけでなく、恋敵だと理解している事が読み取れます。

 一方、美登利の冷静な言葉選びに、幼馴染の正太への気持ちと、信如への気持ちが全く違うものだと言う事も、感じられる場面です。

一緒に写真を撮ろうよ

と誘う正太に、美登利は

変な顔に写ると、お前に嫌われるから

という返事で、やんわり断るのです。もしかすると、その写真を信如に見られたくなかったのかも知れません。

 

 夏の場面でもわかるのは、いかに美登利が、まだ「吉原の実態」「自分の身の行く末」を、まともに教わってもいなければ、理解もしていないという事です。

 

 

以上、第二章から第六章までの、感想・解釈でした。

 

お付き合いありがとうございます。

 

樋口一葉『たけくらべ』について 今更ながら、 主要人物紹介を少々💦

皆様、いかがお過ごしでしょうか?

私は、いろいろ考え、引き続き「たけくらべ」について書きます。💦

 

10月初旬に、私はこちらの伝記本を読みました。

 

 

それで、樋口一葉さんの人生や人柄について、それまで知らなかった事を知り、

命日が11月の下旬である事を知りました。

 

その日に向けて、個人的な感想・解釈までを記事にしたいと思った次第です。

 

今回は、改めて5人の人物紹介をさせて頂きます。

 

たけくらべ」主な人物紹介(年齢順)

 

長吉(十六歳)

鳶職人の親方の長男息子。

横町組のガキ大将的少年。

対立している表町組の正太郎を目の敵にしている。

信如とは幼馴染。

乱暴者の自分と違い、頭が良く物静かな信如を尊敬している。

 

三五郎(十六歳)

貧しい大家族の長男。

長吉の父親が大家の長屋に住む。

長吉達横町組を恐れている。

親が正太郎の祖母に借金をしている為、表町組の子供たちとも仲良くしている。

怠け者だが愛嬌があり、ひょうきん者。

 

信如(十五歳)

 

龍華寺の跡取り息子。

並みの背丈で、短く刈ったイガグリ頭。

内向的だが勉強家で、学校でも皆から一目置かれている。

家がお寺なのに、商売にも積極的な家族を恥じている。

春の運動会で美登利に親切にされて以来、美登利を避ける様になる。

 

 

美登利(十四歳)

 

華やかな装いと可愛らしい容姿。

明るく、おきゃんな性格。紀州生まれ。

姉が身売りした際、楼の主に誘われたので、両親と三人、姉のいる吉原へ越して来た。

姉の恩恵で羽振りが良く、周りの大人たちも金銭的に甘やかすため、気前よく散財する。

一つ年下の正太郎と仲が良く、表町組の人気者。

まだ花魁の本当の苦労、吉原の本当の姿を知らず、素直に憧れている。

信如の事が気になるが、避けられるので気分を害している。

 

正太郎(十三歳)

 

表町で金貸し業を営む祖母と二人暮らし。

表町組子供達のリーダー的存在。

横町組の長吉と信如をライバル視している。

経済的には裕福だが、祖母との暮らしは寂しく、両親や兄弟がいる子供たちを羨ましく思っている。

しっかり者だが、優しく繊細で、家業の手伝いも本当は辛く感じている。 

一つ年上の美登利を姉の様に慕い、憧れている。

歌を歌うのが癖。

 

 

 

皆それぞれ魅力的な子供達です。

 

今日の心のBGMは、80年代のヒット曲

チェッカーズギザギザハートの子守唄でした。
アラフィフの私は、長吉の事を考えると、この曲が浮かんできます。

 

「ちっちゃな頃から 悪ガキで〜」「十五で不良と呼ばれたよ〜」

 

長吉は、そんな子供だったのじゃないかなと、イメージしています。


チェッカーズ「ギザギザハートの子守唄」



www.uta-net.com

 

お付き合い、ありがとうございます。

 

次回からは、「春夏秋冬」季節別に物語の感想・解釈をまとめたいと思っています。
 

樋口一葉『たけくらべ』現代語訳 第十六章  「不朽の物語」の最終章「枯れる事なき花」

こんにちは!

だいぶ寒くなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

私事で恐縮ですが、11月4日は、私がブログを始めた日です。

 

今回は、ついに「たけくらべ」第十六章 最終章です。

ブログ4周年記念日を、この記事にする事ができて嬉しいです。

 

私個人は、この最終章は、決して悲しいだけの結末ではないと感じております。

 

この章のイメージの音楽だけは、前々から、エンヤさんの曲に決めていました。 

Amarantine

  

たけくらべ    第十六章  (晩秋から冬へ ある霜の朝)

 

 

 

 正太が道を真一文字に駆け抜けて、人中を抜けつ潜りつ、筆やの店へおどり込むと、いつの間にか祭の店じまいを済ませた三五郎が、そこに来ていた。

 前掛けのポケットに幾らかの小銭をじゃらつかせて、弟妹を引き連れた三五郎が

 

「好きな物を何でも買いな」

と、一番年上のお兄さん風をふかせ、大得意になっている最中へ、正太が飛び込んで来たのだった。

 

「やあ正さん、今ちょうど、お前の事を探していたんだ。俺は今日は、かなりの儲けがあったので、何か奢ってやろうか?」

と、三五郎が言うと、

 

「バカを言え!てめえに奢ってもらう、俺じゃあないわ!黙っていろ!生意気な事を吐くな!」

と、いつになく荒い事を言った後、

 

「おれは今は、それどころじゃないんだ」

と、ふさぎ込んで言った。

 

「何だ何だ、喧嘩か?」

と、食べかけのアンパンを懐にねじ込んで、三五郎が

「相手は誰だ?龍華寺か、長吉か?

 どこで始まったんだ、廓内か、鳥居前か?おれだって夏祭りの時とは違うぜ!

前みたいに出し抜けでさえなければ、負けねえぜ!

おれが承知だ、先頭に立ってやらあ!正さんは、肝っ玉をしっかりしておれに任せてくんねえ!」

と、息巻くので、

 

「ええい、気の早いやつめ!喧嘩ではない!」

と、しかし、流石に本当の訳は言いかねて、正太がそこで口をつぐむと、

 

「でも、お前が大事らしく飛び込んで来たから、オレは、てっきり喧嘩かと思ったんだ。だけれど正さん、今夜始まらない様なら、もうこれからは喧嘩は起こりっこはないね。長吉の野郎の片腕がいなくなるのだもの。」

と、三五郎が言った。

 

「何故?どうして片腕がなくなるんだ?」

 

「お前知らないのか?オレもたった今、ウチの父さんが龍華寺の奥さんと話していたのを聞いたのだけれど、信さんは、もう近々、どこかの坊さん学校へ入るのだとさ。

坊さんの衣を着てしまっては、手が出せねえや。

全く、あんなペラペラした、恐ろしく長い袖や裾を捲り上げるのだからね。

そうなれば来年からは、横町も表も、残らずお前の手下だよ。」

と、三五郎におだてられた正太は

「よしてくれ!どうせお前は二銭もらえば、長吉の組になるんだろう。

お前みたいな様なヤツが百人仲間にいたって、ちっとも嬉しくはないや!着きたい方へどこへでも着きやがれ!

オレは人には頼まないさ。

本当に、自分自身の腕っこで、一度、龍華寺と喧嘩をやりたかったのに……

よそへ行かれては仕方がない。

藤本は、来年学校を卒業してから行くのだと聞いていたけれど、どうして、そんなに早くなったのだろう?

しょうのない野郎だ!」

と、舌打ちした。

 しかし本当は、その事は少しも気に止まらなくて、それよりも先ほどの美登利のそぶりが頭の中で繰り返されて、正太は、何時もの歌の癖も出ないほど。

 大通りの往来の騒がしさも、心の寂しさのために、賑やかだとも思えず、火ともしの夕暮れ頃から、筆やの店の中に転がったまま。

 今日の酉の市は、メチャメチャで、何もかもが訳の分からない事だらけ

 

 

                  ※

 

 

 美登利は、あの日を境に、生まれ変わった様な身の振る舞いになった。出かける用事といえば、廓の姉のところへは通うものの、全く町では遊ばなくなった。友達が寂しがって誘いに行っても、

 

「そのうちに、そのうちに……」

 

と、空約束ばかりが果てしなく続き、あれほど仲良しだった正太とさえも親しくせず、いつも恥ずかしそうに顔だけ赤らめてばかり。

 筆やの店先での手踊りの活発さを再び見る事は難しくなってしまった。

 

 町の人々は不思議がり、病気のせいか?と、疑う人もいたけれども、母親一人だけは、平然と微笑みながら、

 

「今におきゃんの本性は現れまする。今はちょっとした中休み」

 そう訳ありげに言われても、事情を知らない者には、何の事だかわからない。

 

「女らしく、大人しくなった」

と、褒める者もいれば、

 

「せっかくの面白い子を台無しにした」

と、責める者もいた。

 

 表町は、急に火が消えた様に寂しくなり、正太の美声の歌を聞く事も稀になった。

 ただ、夜な夜なの弓張りちょうちんを見かけるだけ。あれは日がけの集金と知られていて、土手を行く正太の影は、とても寒そうで、時々お供をする三五郎の声だけが、いつもと変わらず、おどけて聞こえるのだった。

 

 龍華寺の信如が、自分の宗派の修業の場所に旅立つ噂さえも、美登利は、ずっと知らなかった。

 美登利は、信如に対する以前の意地を、そのまま心に封じ込めていたし、ここしばらくの異常な現象のために、自分を自分とも思えず、ただ全ての事を恥じいるばかりだったのだが。

 

 ある霜の朝水仙の作り花を、格子門の外から差し入れていった者があった。

 誰の仕業なのか、知るよしもなかったのだが、美登利は何ゆえともなく、愛しい思いがして、ちがい棚の一輪ざしに入れて、寂しく、その清らかな姿を愛でていたのだが……

 

 その後、聞くともなしに伝え聞いた話では、その、水仙の作り花の事があった次の日は、信如がどこかの学校に入り、袖の色を変えた、ちょうどその当日だったという。

 

                         (完)

 

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参考文献はこちらです。

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

  • 発売日: 2004/12/11
  • メディア: 文庫
 

 

 

 最終章の心のBGMはこの曲でした。

Amarantine

Amarantine

  • エンヤ
  • 洋楽
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 今回は動画が見つからず、この様な形にしました。

 

歌詞の意味は、私は英語に詳しくはないのですが、

次の様なニュアンスなのではないかと思い、歌詞の一番だけ、勝手ながら訳してみました。

 

「Amarantine」 enya  

 

誰かに愛を贈る時は  心が開かれる様で  全てが新しく見えませんか?

そして 時はいつでも 貴方の心に 教えてくれませんか? 

それが真実だと 信じることを 

 

愛は 貴方の口から 流れるもの全て 

ささやき 言葉 約束 そうした貴方からの贈り物

 

一日の鼓動の中に 感じませんか?

これが 愛する という事だと

 

 

  Amarantine...            Amarantine ...        Amarantine...

「枯れる事ない花」   「特別な花」           「永遠の花」

 

  Love is.        Love is.        Love...  

  愛のこと  愛のこと  愛の…

 

 

たけくらべ」の現代語訳は、以上です。

第一章から十六章まで、短い様で長かったと思います。

皆様、お付き合い、ありがとうございました。

 

樋口一葉さんの「たけくらべ」の素晴らしさをお伝えしたくて、

やり慣れない事を、やってみました。

 

次回は、私個人の感想・解釈を書かせて頂けたらと思っています。m(_ _)m

 

もう直ぐ冬ですね。皆様、ご自愛ください。

樋口一葉『たけくらべ』現代語訳 第十五章  春、夏、秋、酉の市、そして冬と悲しみの訪れ

 十一月に入りました。皆様、いかがお過ごしでしょうか?

今回は「たけくらべ」第十五章の解説を失礼します。

 

先日、少し調べましたら、今年の大鳥神社の酉の市は、

たけくらべ」の作中の年と同じく、三日間ある年なのだそうです。

 

そして、今年の一日目は、「十一月二日」

つまり、今日なのだそうです。

そういう事もわかり、今日、十五章を記事にしようと思いました。

 

第十四章の続き、大黒寮の場面です。

 

前回、記事の中で紹介しました映画「SAYURI

高畑勲監督の「かぐや姫の物語

そして、樋口一葉の「たけくらべ

には、やはり共通点がある様に、私は感じます。 

かぐや姫の物語 北米版 / Tale of the Princess Kaguya [Blu-ray+DVD][Import]

 

たけくらべ 第十五章 (酉の市 大人に成るは厭な事)

 

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 美登利は悲しく恥ずかしく、人に知られたくない事が自分の身にあるので、人々の褒め言葉は、かえってあざけりの言葉に聞こえるだけ。島田の結い髪の美しさに振り返る人達があると、その視線も、かえって自分を蔑む目つきに思えた。居たたまれぬ気持ちになり、

 

「正太さん、私はうちへ帰るよ」

と言うと、

 

「なぜ、今日は遊ばないのかい?お前、何か小言を言われたのか?大巻さんと喧嘩でもしたのじゃないか?」

 

と、正太に子供らしい事を尋ねられたけれど、何と答えたらよいのか……何も言えず、顔が赤らむばかり。

 連れ立って団子屋の前を通り過ぎた時、トンマが店から大声で

 

「お仲がよろしゅうございます!」

と、大げさにはやし立てたのを聞くと、美登利は益々、泣き出しそうな顔つきをして、

 

「正太さん、一緒に来ては嫌だよ」

と、正太を置き去りにして、一人足を早めたのだった。

 

 お酉様の祭りへは、一緒に行こうと言っていたのに、そちらへの道ではなく、自宅の方へと美登利が急ぐので、

 

「お前、一緒には来てくれないのか?なぜそちらへ帰ってしまうんだい?あんまりだぜ」

 

と、正太がいつもの様に甘えてかかるのを、美登利は振り切る様に、物も言わずに言ってしまう。

 何が原因かはわからないけれど、正太が呆れて追いすがり、袖を捕まえては怪しがると、美登利は顔だけ真っ赤にして

 

「何でもない」

と、一言。それには何か訳がある様だった。

 

 美登利が大黒寮の門をくぐって入っていく。正太は前から遊びに来慣れていて、さほど遠慮する必要がある家でもなかったので、美登利の後から続いて、縁側からそっと家の中に上がり込むと、美登利の母親がそれを見つけて言った。

 

「おお正太さん、よく来て下さった。今朝から美登利の機嫌が悪くて、みんな、どうしたら良いかわからず、困っています。遊んでやってくだされ」

と、言ったので、正太は大人の様にかしこまって、

 

「体の具合が悪いのですか?」

と、真面目に尋ねた。すると

 

「いいえ」と、母親は、怪しい笑顔をした。

 

「少し経てば治りましょう。いつでもこの通りのわがままさん。さぞ、お友達とも喧嘩しましょうな。ほんに扱い切れないお嬢様であります」

と言って振り返った。

 

 美登利は、いつの間にか小座敷に布団とかい巻きを持ち出していた。そして帯と上着を脱ぎ捨てると、布団に入り、うつ伏して、ものも言わない。

 正太は、恐る恐る枕元へ寄って行き、

 

「美登利さん、どうしたの、病気なのかい?気分が悪いとか、一体どうしたの?」

 

と、むやみには近寄らずに、しゃがみこんだ膝に手を置いて、心ばかりを悩ませていると、美登利は、やはり返事もせずに、顔を押さえつけた袖に、忍び泣きの涙。

 まだ結こまない前髪の先が濡れて見えるのにも、何か事情があるように思えるのだけれど、子供心にも正太は、何も慰めの言葉も出て来ず、ただ、ひたすらに困り果てるばかり。

 

「何がそんなに腹が立つの?」

と、覗きこみ、途方に暮れながら尋ねると、美登利は目を拭って言った。

 

「正太さん、私は怒っているのではありません」

 

「それなら、どうして?」

と、正太に問われても、憂鬱で情けない事情がいろいろある。これはどうしても話せない、人に知られたくない事なので、誰に打ち明けて話す事もできない。

 しかし言葉はなくても、おのずと頬は赤くなり、特に何も答えなくても、だんだんと心細い思いになる。

 すべては、昨日の美登利の身には覚えがなかった気持ちが宿っていて、事態の恥ずかしさは言い様がない。

 

(できる事なら、薄暗い部屋の中で、誰にも声をかけられず、自分の顔を眺める者もなく、朝から晩まで一日中、一人気ままに時を過ごす事ができれば良いのに。

 そうすれば、この様な憂鬱な事があっても、人目を恥ずかしがる事も無いので、ここまで思いつめる事も無いだろうに。

 何時までも何時までも人形とお雛様を相手にして、ままごとばかりしていられたら、どんなにか嬉しいだろうに。

 ええ、嫌や嫌や!大人になるのは嫌な事!何故この様に歳をとる?もう一度、七月、十月、一年も前にもどりたい!)

 

 と、年寄りじみた考えをしていて、正太がここにいる事にも気遣うことが出来ず、正太が何か言いかけても、それをことごとく蹴散らして言った。

 

「帰っておくれ、正太さん。お願いだから帰っておくれ!

お前がいると、私は死んでしまうでしょう。

話しかけられると頭痛がする、口を利くと目が回る。

誰も、誰も、私のところへ来ては嫌だから、お前もどうぞ、帰って!」

 

と、何時もに似合わぬ、愛想尽かしの言葉。正太は、何故なのか訳も分からず、まるで煙の中にいる様なので、

 

「今日のお前は、どうしても変てこだよ。いつもなら、そんな事をいうはずはないのに。変な人だね!」

 

と、これは少しがっかりした思いだったので、落ち着いて言いながらも、目には気弱な涙が浮かんでいた。にも関わらず、今日の美登利は、正太の、そうした様子にすら、気遣う事も出来ない。

 

「帰っておくれ、帰っておくれ!

これ以上いつまでもここにいるのならば、もう、お友達でも何でもない。

嫌な正太さんだ!」

 

と、憎らしそうに言われたので、正太は

 

「それならば帰るよ。お邪魔さまでございました!」

 

と、言い捨てて、風呂場で湯加減を見ている母親には挨拶もせずに、プイッと立って、正太は庭先から駆け出したのだった。

 

 

 

参考文献はこちらです。

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

  • 発売日: 2004/12/11
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

 

この章の心のBGMは、「かぐや姫の物語」より「わらべ唄」でした。


かぐや姫の物語 わらべ唄 高音質

 

 

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かぐや姫も「たけのこ」とあだ名されて、無邪気に元気に山の子供たちと遊んでいた頃が、一番幸せだったのだろうなと、改めて思いました。

 

お付き合い、ありがとうございます。

 

樋口一葉『たけくらべ』現代語訳 第十四章 酉の市の人混みを彷徨う正太と、島田結いになった美登利の心細さ

もうすぐ11月ですね。皆様、いかがお過ごしでしょうか?

 

今回は、「たけくらべ」第十四章解説失礼します。

最終章まで、後、三章となりました。

 

辛く悲しい三章なのですが、それだけではない内容だと思います。

第十四章は、

 

それまで信じていた事が、突然信じられなくなった事がある皆様

ある事がきっかけで、突然、自分への自信を失った事がある皆様

現実の厳しさを突きつけられて、絶望しそうになった事がある皆様

 

に、読んで頂きたい章です。

 

 

今回の心のBGMは、巨匠ジョン・ウィリアムズの映画音楽でした。 

映画「SAYURI」は、「芸者」になった日本女性の物語です。

美登利には「花魁」としての未来が待つようですが…

 

「SAYURI」オリジナル・サウンドトラック

 

たけくらべ 第十四章  (酉の市 蝶よ花よと育てられ)

 

 

 

 この年は、十一月の酉の市が、三日間ある年であった。中日は雨でつぶれたが、前後の二日は天気に恵まれ、大鳥神社の賑わいは凄まじいものだった。

 

 この祭りにかこつけて、検査場の門から遊郭の店内に押し入る若者たちの勢いといったら……天を支える柱が砕けて、大地が隠れるかと思える様な笑い声のどよめき。

 

 中之町の通りは、突然に方向が変わったかの様に思われて、角町京町、あちらこちらの跳ね橋から、さあさあ押せ押せと、遊客を運ぶ、猪牙舟の船頭の様に威勢の良い掛け声に、人の波を分けて進む群れもある。

 

 河岸の小店の遊女達の呼び声から、最も立派な遊女屋の上階まで、弦の音、歌声が様々に沸き起こる様な面白さは、たいていの人が後々まで思い出し、忘れられない出来事だろうと、思う人もあるだろう。

 

 

 正太はこの日、日がけの集めを休ませてもらい、三五郎が出している、大頭と呼ばれる、縁起担ぎの芋料理の店を見舞ったり、団子屋のノッポの家族の、愛想のない汁粉屋を訪れた。

 

「どうだ、儲けがあるか?」

と、尋ねると、

 

「正さん、お前良いところへ来た。

俺んところは今、餡子が材料切れになってしまって、もう今からは何を売ったらいいだろう?

すぐに次を煮れる準備はしておいたのだけれど、途中のお客は、今更断れないよ。どうしたらいいかな?」

と、相談を持ちかけられた。

 

「知恵のないヤツだな。大鍋のまわりに、それっくらいの無駄な餡子がついているじゃないか。それへお湯をまわしかけて、砂糖で甘くすれば、十人や二十人前は、浮いてくるだろう?どこでも皆そうするのさ。

お前のとこばかりじゃないよ。何、この騒ぎの中で、味の良し悪しを言う人もいないだろう。

そうやって売りなよ、売りなよ」

と言いながら、先に立って砂糖のつぼを引き寄せると、片目の、ノッポの母親が驚いた顔をして、

 

「お前さんは本当に、商人に出来ていなさる。恐ろしい知恵者だね」

と、褒めた。

 

「なんだ、こんな事が知恵者のものか。今、横町のひょっとこ顔のところで、飴が足りないって、こうやったのを見てきたので、俺の発明ではない」

と、言い捨てた。そして

 

「お前は知らないか?美登利さんのいるところを。

オレは今朝から探しているのだけれど、どこへ行ったのか、筆やへも来ないんだ」

と言う。

 

「廓の中だろうかな?」

と、尋ねると、

 

「うむ、美登利さんはな、今さっき、俺の家の前を通って揚屋町のはね橋から入っていったよ。

本当に正さん、大変だぜ。

今日はね、髪をこういう風に、こんな島田に結ってね……」

と、ヘンテコな手つきをして、

 

「きれいだねぇ、あの子は」

と、鼻を拭きながら言った。

 

「大巻さんより、もっと美しいや。だけれども、あの子も花魁になるのでは、かわいそうだ」

と、下を向いて正太が答えた。するとノッポのトンマが、

 

「いいじゃあないか、花魁になれば。

俺は来年から際物屋(注釈一)になって、お金をこしらえるがね。それを持って、あの子を買いに行くつもりだよ」

と、トンマな事を言い出したので、

 

「しゃらくさい事を言っていらあ!そんな事をすれば、お前はきっと振られるよ!」

 

「なぜなぜ?」

 

「なぜでも、振られる理由があるんだよ!」

と、顔を少し染めて笑いながら言った。

 

「それじゃあオレも、一回りして来ようかな。また、後で来るよ!」

と、捨て台詞を残して、門を出た。

 

「十六、七の頃までは、蝶よ花よと育てられ……」

と、怪しげな震え声で、この頃のここら辺の流行歌の一節を言って、

「今では勤めが身にしみて……」

と、口の中で繰り返し、例の雪駄の音が高く浮き立つ、人ごみの中に混ざって、小さな体は、たちまち隠れてしまった。

 

 もまれながら出てきた廓の角で、向こうから年増の女番頭のお妻と連れ立って話しながら来る人を見ると、それは紛れもなく大黒屋の美登利だった。

 

 

 誠にトンマが言っていた通り、初々しい大島田結いに、綿のように絞りばなしを、ふさふさとかけて、べっ甲の櫛を差し込み、房付の花かんざしをひらめかせている。

 いつもよりは極彩色の、まるで京人形を見るように思われて、正太は、あっとも言わずに立ち止まったまま。

 いつものようには抱きつきもせずに、じっと見守っていると、

 

「そこにいるのは正太さんかい?」

と言って走り寄ってきた。

「お妻どん、お前、買い物があるのなら、もう、ここでお別れにしましょ。私はこの人と一緒に帰ります。さようなら」

といって、頭を下げると、

 

「あれまあ、美いちゃんたら現金な。もうお見送りは入りませぬかえ?そんなら私は、京町で買い物しましょう」

と、チョコチョコ走りで、長屋の細道へ駆け込んでいった。

 

 そこで正太は、初めて美登利の袖を引いて、

「よく似合うね。いつ結ったの?今朝かい?昨日かい?なぜ早く見せてくれなかったの?」

と、恨めしそうに甘えると、美登利はしょんぼりして、言いにくそうに

「姉さんの部屋で、今朝結ってもらったの。私は嫌でしょうがない

と、うつむいて、行き来する人々の目を恥じるのだった。

 

 

注釈一

その時の流行品を売る商

 

 

 

参考文献はこちらです。

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

  • 発売日: 2004/12/11
  • メディア: 文庫
 

 

 

 


今日の心のBGMは、巨匠ジョン・ウィリアムズ氏の「Memoris of a Geisha」でした。


Memoirs of a Geisha | John Williams and Yo-Yo Ma | Live

 

この映画も、一度、観たい映画です。

曲の方は「フィギュアスケート」の曲として、よく聴いたことがありました。

とても美しい曲だと思います。

 

お付き合い、ありがとうございます。

 

樋口一葉『たけくらべ』現代語訳 第十三章「きみなき」格子門の外に「捨ててき」てしまった大切な物を…解説🍁

 こんにちは!

今回は「たけくらべ」第十三章の解説を失礼します。

格子門前で起きた一大事の後編です。

 

 

好きな人に、格好悪い所を目撃されてしまった事がある皆様

好きな人の素っ気無い態度に、少なからず傷ついた事がある皆様

 

に、ぜひ読んで頂きたい章です。

 

 この章も、私の個人的なBGMは、ユーミン・ソングの1曲でした。

 

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たけくらべ 第十三章  (雨に濡れた紅入りの友仙)

 

 

 

 ここが大黒やの前だと思った時から、信如は自然と恐ろしくなって、左右を見ずに、ひたすら歩いていた。しかし、あいにくの雨、あいにくの風。

 その上、下駄の鼻緒すらも踏み切ってしまい、仕方なく格子門の下で、こよりをよっている時の心中といったら……

 心配な予感予測が色々浮かんできて、どうにも耐えられない思いだった。

 

 そこに飛び石を踏む足音が聞こえて来た事は、まるで背中から冷水をかけられたのも同じであった。振り向いて見なくても、それが美登利その人だとわかれば、ワナワナと震えて顔色も変わるはずである。

 後ろ向きになって、それでもまだ鼻緒に集中しているふりをしながら、半分は上の空で、その下駄はいつまでかかっても履ける様にはなりそうにない。

 

 

                    

 

 

 一方、大黒寮の門内にいる美登利は、格子越しに、その様子を伺っていた。

 

(ええ、なんて不器用な……あんな手つきをして、どうなるものか。こよりは逆よりだし、わらしべなんかを前つぼにあてがっても、長持ちするはずがない。

 それそれ、羽織の裾が地面に着いて、泥がついているのはご存知か?

あれ、傘が転がる!

あれを畳んで立てかけておけば良いのに!)

と、一々もどかしく、歯がゆくは思っても、

(ここに切れがござんす。これでおすげなさいな)

と、呼びかける事もできず、こちらも立ち尽くして、降る雨が袖をわびしく濡らしているのを避ける事もせず、そっと格子越しに伺っているばかり。

 

  そうとは知らない母親が、はるか屋内から声をかけてきた。

 

「火のしの火がおこりましたぞえ。これ、いったい美登利さんは、外で何を遊んでいるのかい?雨が降っているのに、表へ出てのいたずらは、なりませんよ。また、この間のように風邪を引きますよ!」

 

と、呼びたてられたので、

 

「はい、今行きます!」

 

と、大きく返事をした。

 その声が信如に聞こえたであろう事が恥ずかしく、胸は、ワクワクと上気する。

 そして、どうしても開ける事が出来ずにいる門の横で、それでも見過ごす事もできない、この状況である。

 いろいろと思案を巡らせたあげく、美登利は格子の間から、手に持っていた布切れを、物を言わずに門の外側へ思い切って投げ出してみた

 

 すると信如が、それを見ない様に見て知らぬ顔を作った様に、美登利には見えたので、

(ええい、いつもの通りの根性悪め!)

と、やるせない思いを瞳に集めて、少し涙の恨み顔になった。

(何が憎くて、私に、その様な冷たいそぶりをするの?言いたい事はこちらの方にあるのに。あんまりだわ、本当にひどい人!)

と、怒りと悲しみがこみ上げて来て、心が詰まる。

 けれど、母親の呼び声が、しばしばかかるのも辛くなり、仕方なく一足、二足踏み出し、それから

(ええい、何よ未練がましい!こんな自分の思惑が恥ずかしい!)

と、身を翻し、カタカタと音を立てて飛び石伝いに走り去った。

 

 

                    

 

 

 信如がその時、やっと寂しく振り返ってみれば、紅入りの友仙の、雨に濡れて紅葉の美しい模様が、自分の足の近くに落ちていた。

 それを見た信如は、そわそわして心が惹かれたのだが、手に取り上げる事もせずに、空しく眺めて、うちしおれていた。

 

 自分の不器用を諦めて、羽織のひもの長いものを外し、結わえつけにクルクルとみっともない間に合わせをして、これならどうかと踏んで試してみると、歩きにくいと言わざるを得なかった。

 この下駄で田町まで行くのかと、改めて困ったと思ったのだが、仕方なく立ち上がった信如。

 小包を脇に抱え、二歩ばかり門から離れたのだが、友仙の紅葉が目に残って、そのまま捨てて過ぎるのも耐え難く、心残りで見かえった。

 

 するとその時、

 

「信さんどうした、鼻緒を切ったのか?そのなりはどうだ!みっともないなあ。」

 

と、不意に声をかける者があった。

 驚いて振り返ると、暴れ者の長吉がいた。今、ちょうど遊郭からの朝帰りと見えて、浴衣を重ねた唐桟のしゃれた着物に、柿色の三尺帯を、いつもの様に腰の先に巻き、黒八丈の立派で新しいはんてんという装いである。

 

おまけに、遊郭の店の印のついた傘をさしかざして、高下駄の雨よけ革も、今朝下ろしたてだとわかり、漆の色も際立って見えて、いかにも誇らしげである。

 

「僕は鼻緒を切ってしまって、どうしようかと思っている。本当に困っているんだ」

と、信如が意気地のない事を言うと、

「そうだろう、お前に鼻緒は直せるまい。いいや、俺の下駄を履いて行きねえ、この鼻緒は大丈夫だよ」

と、言ったので

「それでは、お前が困るだろう?」

「何、俺は慣れたもんだ。こうやって、こうする…」

と、言いながら、慌ただしく着物の裾を、七分三分に端折って帯にはさむと

「そんな、その場しのぎなんぞよりも、これがさっぱりだ!」

と、下駄を脱ぐので

「お前、裸足になるのか?それでは気の毒だよ」

と、信如が困り切っていると、

「いいよ、俺は慣れた事だ。信さんなんぞは、足の裏が柔らかいから、裸足で石ころ道は歩けないよ。さあ、これを履いておいで」

と、一足を揃えて出す親切さである。

 人には、疫病神の様に嫌われながらも、毛虫眉毛を動かして、優しいセリフを口にしたのが、何だかおかしい。

「信さんの下駄は、俺が下げていこう。家の台所へ放り込んでおけば、差し支えないだろう?さあ、履き替えてその下駄を出しな」

と、世話を焼き、鼻緒の切れた下駄を片手に下げた。

「それじゃあ信さん、行っておいで。あとで学校で会おうぜ!」

と、約束し、信如は田町の姉のもとへ、長吉は我が家の方へと別れたのだった。しかし、美登利信如の思いを残した紅入りの友仙は、そのいじらしい姿を、空しく格子門の外に止めたままだった。

 

 

 

参考文献はこちらです。

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

  • 発売日: 2004/12/11
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

 

この章の心のBGMは、ユーミン様の「きみなき世界」でした。

私は、この曲を「松任谷由実:隠れた名曲」と言うアルバムで、数ヶ月前に知りました。


きみなき世界 松任谷由実

 

 

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アルバムの曲で聞くとわかりやすいのですが、リズムが「レゲエ」なんです。

私は今まで、「レゲエ」には、「明るい」イメージしか持っていませんでした。

こちらの曲で私は「哀愁」とか「傷心」とか「かっこよさ」「可愛らしさ」を感じます。

ギターのメロディーがかっこいいです。

 

 

お付き合い、ありがとうございます。

樋口一葉『たけくらべ』現代語訳 第十二章「ミルク色」をした雨と風の中で起こった一大事を…解説☂️

こんにちは!

皆様、いかがお過ごしでしょうか?

私の地方は、結構、強い風が吹いています。

 

たけくらべ」第十二章、私なりの現代語訳、解説を失礼します。

 

雨風の中で、とても困ってしまった経験がある皆様

 

に、ぜひ読んで頂きたい章です。

 

なぜなら、この物語のクライマックス・シーンの前編だからなのです。

 

敬愛するユーミン様のファースト・アルバム「ひこうき雲」のイメージで失礼します。

季節や天候を歌詞に含んでいる曲が多く、名曲揃いです✨

ひこうき雲

 

たけくらべ 第十二章  (時雨の朝 格子門の前 前編)

 

 

 信如がいつも田町へ通う時に、本当は通らなくても事は済むのだけれど、言うなれば近道なので通る土手前に、偶然にも格子門がある。

 この門をのぞけば、京都の鞍馬の石灯籠に、萩の袖垣の、しおらしく美しい様子なのが見られて、家の縁側近くに巻いてあるすだれの様子も、親しみが持てて心惹かれる。

 

 中ガラスの障子の内側には、今風の按察の後室(注釈一)が、数珠を指先にかけて手を合わせており、そこに、おかっぱ頭の幼い若紫も、不意に現れるのではないかと思われる佇まい。その一構えの建物が、美登利の住む大黒寮なのであった。

 

 昨日も今日も時雨の空なのだが、

 

「田町の姉から頼まれていた長胴着が仕上がったので、親心としては少しでも早く着させてあげたいから、ご苦労だけれど、学校の前の少しの間に、あなたが持っていってくれないかい?

きっと、姉のお花も、待っているだろうから。」

 

との、母親からの言いつけを、特に嫌とも言い切れない、おとなしい真如。ただ、

 

「はいはい」

 

と、小包を抱え、ねずみ小倉の鼻緒をすげた、朴の木の下駄を履き、ひたひたと、信如は雨傘をさして出かけたのだった。

 

                  

 

 お歯黒どぶの角から曲がって、いつも行き慣れた細道を歩いていると、運悪く、大黒やの前まで来た時、さっと吹く風が、大黒傘の上を掴んで、宙に引き上げるかと疑うばかりに激しく吹いた。

 

(これはいかん!)

 

と、力一杯足を踏ん張った途端、大丈夫だと思っていた下駄の鼻緒がズルズルと抜けてしまい、傘よりも、これこそが一大事になった。

 信如は困って舌打ちをしたけれども、今更、何とも方法がないので、大黒やの門に傘を寄せかけて、降る雨を門のひさしの下に避け、鼻緒を直そうとしたが、普段そうした事に慣れていないお坊さまである。

 

(これは、どうしたらいい事だろう)

 

 心ばかりは焦っても、どうしても上手くは、すげる事ができないので、悔しく自分でもじれて、焦れて、もどかしい。

 

 仕方なく袂の中から、文章を下書きしておいた大半紙をつかみ出し、急いでそれを割いて、こよりをよっていると、意地悪い嵐が、またもや襲って来て、立て掛けていた傘が、ころころと転がりだした。それを、

 

「いまいましい奴め!」

 

と、腹立たしげに言いながら、引き止めようと手を伸ばしたら、今度は膝に乗せておいた小包が、意気地もなく落ちてしまい、風呂敷は泥まみれ、自分の着物の袂まで汚してしまったのだった。

 

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 見かけて気の毒といえば、雨の中で傘がなく、道中で下駄の鼻緒を踏み切った人ほど、気の毒な状況はない。

 美登利は、障子の中ながら、ガラス越しに遠くを眺めて、その様子に気がついた。

 

「あれ、誰か鼻緒を切った人がある。

母さん、布切れを使ってもようござんすか?」

 

と、たずねて、針箱の引き出しから友仙ちりめんの切れ端をつかみ出し、庭下駄を履くのも、もどかしい様子で駆け出し、縁側の外のコウモリ傘をさすよりも早く、庭石の上を伝って、急ぎ足でやって来たのだった。

 

                  

 

 門前のその人が信如だとわかった途端に、美登利の顔は赤くなった。どの様な一大事にあったのかという様子で、胸の鼓動の早い響きを、人に悟られはしないかと後ろを気にしながらも、恐る恐る門のそばへ寄った。

 

 その時、信如も、ふっと振り返ったが、こちらも無言のまま。脇を冷や汗が流れるのを感じて、恥ずかしさに、いっそ裸足になって逃げ出したい気持ちになっていた。

 

 

 いつもの美登利なら、信如が困っている様子を指差して、

「あれあれ、意気地のない人!」

と、笑って笑って笑い抜いて、言いたい放題、憎まれ口を叩いた事であろう。

「よくも、お祭りの夜には、正太さんをやっつけるといって、私達の遊びの邪魔をさせたわね。

 罪のない三ちゃんを叩かせて、お前は高みで采配を振るっていたのでしょう?

 さあ、謝りなさいよ!さあ!どうでござんすか!

 私の事を女郎女郎と、長吉なんぞに言わせるのも、どうせお前の指図でしょう?女郎でも良いでしょ?何が悪いのよ!ほんの少し、ちり一本だって、お前さんの世話にはならないわ!

 私には父さんも母さんもあり、大黒やの旦那も姉さんもある。

 お前の様な生臭坊主のお世話には、絶対にならないのだから、余計な女郎呼ばわりは、やめてもらいましょ!

言いたい事があるなら、陰でクスクス笑っていないで、ここでお言いなされ!

お相手には、いつでもなって見せまする。さあ、どうでござんす?」

と、袂を掴んで、まくし立てる勢いのはずである。

 

 本当にそうであったなら、信如も反論しづらい状況だっただろうに。

 実際は物も言わずに、格子の影にそっと隠れて、そうかと言って立ち去るでもなく、ただ、もじもじと胸をどきどきさせているのは、いつもの美登利の様ではなかった。

 

 

  

注釈一

源氏物語の登場人物で、若紫の祖母

 

 

 

参考文献はこちらです。

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)

  • 発売日: 2004/12/11
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

 

という訳で、心のBGMは、ユーミン様の「雨の街を」でした。

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余談で・・余談で失礼しますが、

個人的に、歌詞の2番を聴いていて、魔法魔術学校の校長先生が、脳裏をよぎってしまった、

土曜日の昼下がりでした。

 

クライマックスは、次回(後編)に続きます。

 

お付き合い、ありがとうございます。